副社長は溺愛御曹司
ヤマトには、それが心底ありがたく、どんな時も、神谷を見ると、自分を取り戻すことができた。

勝手なヤマトに、言いたいこともあるだろうに、じっと耐えて、自分の仕事に徹してくれる。

それに甘えて、ヤマトは、かなり好きにさせてもらっている自覚があった。


いまだに、自分に秘書など、過分な気がして。

できることは、やらせてほしいと思ってしまう。


神谷は、それに気がつくと、少し残念そうにするけれど。

結局は、ヤマトのしたいように、泳がせておいてくれる。



そんなふうに、なりたい。

誰も責めず、誰も侵さず。

人を活かし、それを支える。


上に立つ人間て、牽引し、決定することも大事だけど。

それと同じくらい、率いる大勢の人間の、土台として構えていることも、大事なんじゃないだろうか。


そんな気がした。








笑いをこらえるのが、一苦労だ。

東京近郊の同業者だけを集めた、簡単なビジネスフォーラムで、登壇する人間を見ながら、必死に真面目な顔を保った。

神谷が書いてくれた、彼の特徴が、あまりに的確すぎるのだ。


「自意識過剰な笑み」って、なんだよこれ。

でも、あたってる。

確かに、何か言うたびに、ちらっと得意げな、明らかに周囲の視線を意識した笑みを浮かべる。


ヤマトはもう、中座しようと本気で悩むくらい、しのび笑いがとまらなかった。

一度来社してくれているから、終わったら、挨拶に行かなきゃいけないのに。

こんなんじゃ、顔もまともに見られない。


手加減してよ、神谷。
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