副社長は溺愛御曹司
だけど、肝心の神谷本人が、それに気がついていないようだとわかった時の失望は、言葉では表しきれない。


なにそれ。

そんなことって、あるの。


期待させやがって、と不満をこめてにらんでみても、神谷は疑問符を顔に浮かべて、首をかしげるだけで。

ちょっと、おっとりというか、ぼんやりしているところはあるなと感じていたけれど、ここまで鈍いとは、とヤマトをあきれさせ。

先は長そうだなあ、と内心でため息をついたのだった。



それが、何がきっかけなのか、突然ヤマトを好きだと言いだし。

あまりの唐突さに、若干あぜんとしながらも、知ってるよ、とつっこみたいのをこらえて、ドキドキしつつ、俺も、と返し。


キスして、抱きしめて、最後までこぎつけたところで、神谷は。



なぜか、ヤマトを無視しはじめた。





ありえないんだけど。

気分の悪さを隠す気もなく、書類が傷むのも構わずに、ばさっと机の端に投げ出した。


顔を見ると、逃げる。

目が合うと、そらす。


用があって話しかければ、濱中さんに伝えます、としか返ってこないし。

あとで部屋に来て、と頼んでも、濱中をよこす徹底ぶりだ。


ふざけんな。

どういうつもりだ。


こっちは、晴れて神谷とそういう関係になれて、残り少ない秘書と役員の生活を、大事に大事に楽しもうと思っていたのに。

そっちがそのつもりなら、こっちから話しかけたりなんて、絶対してやらないからな。


神谷のバカ。


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