副社長は溺愛御曹司
「私の特別な人は、先輩です」
「俺じゃ、ダメだよ」
どうしてですか、と問い詰めても、ダメだから、と言うばかりで、いっこうに聞きいれてくれない。
私はもう、泣きたい気持ちで。
「先輩に、もらってほしいんです」
渇いた土と同じ色に退色した芝生を見つめながら、蚊の鳴くような声で、そう言った。
先輩が、好きなんです。
なのに、初めては、ダメなんて。
じゃあ、どうしたらいいんですか。
好きでもない人と、一回してくれば、いいんですか?
こんな食いさがる自分が、心底みっともなく思えて、恥ずかしくて、うつむいたまま、涙がにじむのを感じた。
ふう、とため息が聞こえて。
あきれられた、見放された、と絶望的な思いで、こぼれる涙をとめられず、唇を噛む。
「じゃあ、途中までね」
困ったようなその声に、えっ? と目線を上げるひまもなく、またキスをされた。
体重をかけられて、再び芝の上に身体を倒される。
経験のない私を、これ以上驚かせないようにか、先輩は優しく髪をなでて、頬や額にキスをくれる。
私を見おろす瞳は、優しくて。
でも、明らかに困っていた。
優しい優しい、ヤマト先輩。
大好きです。
「えっ、そんな、いきなり?」
「やっぱりね、みんな、そう言ってるよ」
由美子と、由美子の友達が交互に言う。
ひそひそと、中庭でお昼を食べながら、先日の報告と、情報交換をした。
こうやって、またネットワークの情報に厚みが増していくんだろう。