副社長は溺愛御曹司
「で、あんたは、どうしたの」
「私は、元彼と経験あったから。そのまましたよ」
「いいなあ…」
つい本音が漏れる。
だけど先輩の「途中まで」は、私には十分すぎるほど刺激的で。
途中でこれなら、最後までしたら、私は何か、別のものになってしまうんじゃないだろうかと思えるくらいだった。
「ヤマト先輩、だいぶイメージと違うね」
「違うけど、がっかりはしなかったの、不思議と」
あきれたような声を出す由美子に、フォローするでもなくそう言うと、由美子の友達も、そうそうとうなずく。
そうなのだ。
えっ? の連続ではあったけれど、なんでか、幻滅とか、がっかりとか、そんなのはまったく感じなくて。
私は、これが「ルール」の発祥のもとなんだろうと確信していた。
あれは、確かに先輩を守る意味もあるんだろうけど。
なによりも、女の子たちの「えっ?」から生まれたものであることに、きっと間違いはない。
その「えっ?」を、告白した子たちで共有できるよう、だけど不必要に広まって、先輩の評判を落としたりしないよう。
そんな、女の子らしいひそやかな遊び心と、先輩への愛から生まれた、ルールなんだと思う。
じゃあ、3つの質問も、具体的に受け継がせてくれたらいいのに、と思うけれど。
仕方ない、先輩から直に聞くまでは、誰ひとり、彼があんなことを言うなんて、信じっこないだろう。
そういえば、とすっかり温くなったココアの缶を傾けながら、考えた。
3つの質問の、残りのふたつは、なんだったんだろう?