副社長は溺愛御曹司
次いきますね、と言ったところで、デスクの電話が鳴った。

本来、ここの電話番号は明かされていないので、ヤマトさんへの電話はすべて秘書室の私の席に来る。

けれどこうしてヤマトさんの部屋で時間を過ごす場合は、私の席への電話が、自動的にここに転送されるように設定しておく。


なので、私が役員机の受話器をとった。



「秘書室、神谷でございます」



聞こえたのは、まさに今名刺を見ていた、あのメタルブルーのネクタイの方の声だった。

保留にして、ヤマトさんに受話器を渡す。



「ご無沙汰しております、堤です」



うってかわって、完全に外交用のその声を聞きながら、机の上に広げた名刺を集めて、私は席を立った。

部屋を出る際、向き直って頭を下げると、電話をしながら、ヤマトさんが気軽に手を振ってくれる。


そういえば、とふと思った。

ヤマトさんはどうして、副社長になんて、なろうと思ったんだろう。











む、と眉が寄る。

まだ、どの役員も出社していない、朝早く。


私たち秘書は、年末のスケジュール調整に頭を悩ませていた。

これが、なかなか難しいのだ。

各方面から年忘れの会のお誘いがあるものの、やはりおつきあいの優先度順にはめこんでいかなければならない。

そして、早けりゃいいってものでもなく。

むしろ、つきあいの浅いところは11月中に終わらせてしまい。

懇意にしている相手は、冬季休業に入る直前あたりに入れられると望ましい。


秘書全員で、ああでもないこうでもないと日程を切り貼りしながらスケジューリングするのが、毎年恒例のイベントだった。

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