Garnet~大好きの伝え方
少しうつむいた彼の答えに、ぱちりと、北川くんがまばたきする。

そしてなにか悟ったみたいに、「へんっ」と鼻で笑った。

ポケットに手を入れ、顎をあげて見下す仕草がさまになりすぎて、本当に悪者にしか見えなくなってきた。

唾を吐かないのが不思議なくらいだ。

「『僕にしてみればそう〝だった〟』? なんだ、過去形っすか?」

「そうだよ。過去形に、なったんだ。だけど……お前の言ってることを肯定してるんじゃない」

首だけを回して、ヨシがちらりと振り返ってくる。

いつの頃からか大きくなって、いつの頃からかしがみついて、抱きついて、すうっと深呼吸してみたくなった背中が、今は、少し丸まっていた。

ああ、って実感する。

ヨシは、過去から未来へ踏み出そうとしてくれているんだ。
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