トールサイズ女子の恋
 水瀬編集長は高坂専務たちを見送ると、私の所にきた。

「お待たせ。行こうか」
「はい……」

 私は左側で水瀬編集長は右側という並びで、水瀬編集長が私の歩くスピードに合わせてくれてゆっくりと駅へと向かうんだけど、どんなことを話せばいいかわからず、こういう時に"女子力"という気のきいた雰囲気の会話を出していかなきゃ、と心の中で自己反省会をする。

「星野さんは今日の歓迎会を楽しめた?」
「はい、楽しかったです。まさか四つ葉出版社の皆さんが殆んど出席するとは思ってもみなかったです」
「会社自体が小さいから、皆でってなるのが多いかな。一緒に働くし、仕事がやりやすいきっかけにはなるよ」
「そうですよね、大人数だと限られたグループに固まりがちですよね」
「星野さんもこれから飲み会に出るといいよ。歳が近い女子社員たちが多いから」

 水瀬編集長が私を少し見上げる形になりながら、にこりと笑うけど、私と水瀬編集長の身長は頭1つ分位の差があった。

 今まで相手の身長は私くらいかその上だったので水瀬編集長のような身長差は初めてで、見上げられるのは新鮮に感じるけど、こうした身長差もまたあの言葉が頭を過ってしまう。

『身長の低い女の子が好みなんだ』

 やっぱ誰だって、トールサイズの女の子が隣に立つのは嫌だよね。

「駅、着いたね」
「あっ……」

 お店から駅まではあっという間で、私たちは改札を入ってホームに繋がる階段前で立ち止まる。

「明日からも宜しくね、俺はあっちのホームだから」
「送っていただいて、ありがとうございました。お休みなさい…」
「ん、お休み」

 私は水瀬編集長に小さく手を振って帰宅に使うホームの階段に向かい、電車が来たので乗った。

「ふぅ…」

 空いている席に座ると疲れがどっと出ちゃって、大きなため息を吐き、勤務初日の疲れとお酒の酔いも手伝ってか、体がふわふわとした感覚になっているし、頭もぼぅっとしてくる。

 地元の駅に到着して、とぼとぼと歩きながら歓迎会のことを思い出す。

「水瀬編集長って話しやすかったなぁ」

 お洒落だし、社員たちから好かれているし。

「彼女だっていそう……」

 恋愛をしに転職をした訳じゃないけど、また振られる恋をするのなら、ここで好きな人は作らないでいた方がいい。

 作らないほうがいいに決まってるもの。
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