キスマーク
常務の口から相手の職業を聞いたとき、あの時、心にヒロの顔を思い浮かべていた。
医者という職業が好条件とか、そんな事を考える前に、本当は彼の事を―…
あの雨の夜から、ヒロと連絡はとっていない。
といっても何時も連絡をしてくるのはヒロだから、私から敢えて連絡を取ることはない。ただ、ヒロから連絡が来ていないだけ。
きっと、またひょっこり連絡は来ると思う。“やりたくなった”時に“会いたい”と。
そんな事を考えたとき、まるで私がそう願っているみたいだと思う。
何時、連絡が切れるときが来るのかわからないなんて思いながらも、ヒロから連絡が来ると思っている私もいる。
そして、こんな事を会社の給湯室でまでも考えてしまっている私―…
そんな自分が嫌だ、と、ここ数日で何度思ったことだろう。