キスマーク



一時間程の食事を終え、店を出る私と久瀬さん。



「もう一軒、と行きたい所なんですけど―…」



申し訳無さそう、というか残念そうな表情で久瀬さんが言う。



「また是非、誘ってください」



と、伝えると、「勿論です」と久瀬さんが笑った。



まだやり残した仕事があるらしく、これからまた勤務先の病院に戻らないといけないらしい。



私と食事をするために、わざわざ時間を作ってくれたみたいで嬉しくもあり―…申し訳ない気分にもなる。



「タクシーで帰りますか?」


「いえ。駅も近いので今日は電車で帰ります」



「じゃあ、せめて駅まで送らせて下さい」



久瀬さんの申し出に一度は“大丈夫ですよ”と伝えたものの、やっぱり送ってもらうことになった。



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