キスマーク
「とにかく―…こんな場所でこんな真似するのはやめて」
マンションから出て行く住人が私達を何事かという目線で見てる。
「じゃあシオリさん、俺の話をちゃんと聞いてくれる?」
それが私の身体から離れる交換条件だとばかりにヒロが言う。
ねぇ、今さら何の話?
半年間じゅうぶん、私たちは関係を楽しんだでしょ?
ここにきて、こんな風に引き止められても知らないよ……
「確かに、俺はシオリさんよりもガキだけど、シオリさんに気持ちを伝える権利ぐらいはあるよ」
「権利って……」
「俺達、何も知らない仲じゃないでしょ?」
多くを知っている関係では無いけど、何も知らない仲じゃない。そんなヒロの言葉。
でも、だから何?
“身体の関係だけ”でしょ―…?
「わかったから―…ちょっとこっちに来て」
仕方なくそう言って、ヒロの服をひっぱり、マンションの非常階段に連れて行く。