ダイス




仕方のない殺人なんてない。


それは深水が常々思っていたことなのだが、同情せずにもいられなかった。


何故そんな思いが湧いたのか。


それはまだ、冷めきっていなかったからなのだろう。


震える少女に、項垂れる青年、そして滅多刺しにされた汚い中年男。


誰が悪いのか。


殺害現場で考えてはいけないことを考えてしまったのだ。


「詳しくは署で聞くから」


深水が言うと、新井はふるふると首を横に振った。


「俺は、逮捕出来ませんよ」


首の動きを止めた新井がやけに静かな口調で言った。




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