冷たいアナタの愛し方
ルーサーの手が自然と腰に伸びるが、いつも腰に下げている剣は今、ない。

もし剣を携帯していたとしても…オリビアを傷つけることはできない。


今は距離を取りながら、オリビアを操っている者と対話をしなくては――


「そんなに警戒しなくたっていいじゃない。あなたは私と会ったことがあるわよ」


「君は……覇王剣…なのか?」


「そうね、その通りよ。ようやく巡り合えたの。オリビアに覇権を。オリビアを王に。それが私の願い」


一歩後ずさるが、オリビアが一歩前進するので距離が開かない。

妖艶な雰囲気を笑みを浮かべたまま近付いてきたオリビアは、手を伸ばしてルーサーの頬に触れると唇を近付けた。


「ちょ…っ、やめてくれ。君はオリビアじゃない。これはオリビアの意志なのか?」


「オリビアの意志よ。あなたをとても好きなのに、国に戻って好きでもない男と結婚しなければならないなんて悲劇の何物でもないわ。それに…オリビアは、私を操って世界を統一するの。それがこの子の運命なの」


すうっと近付いてきた唇が唇に触れそうになると、ルーサーはオリビアの両肩を強く押して離れさせた。


もし今、オリビアが覇王剣の人格に操られずに同じことをしてきたら…拒絶できなかったかもしれない。


だが今目の前に居るのは、間違いなくオリビアではない。


「僕に何か言いたいことがあるならオリビアから直接聞きたい。君の言うことは信じられない。わかったらここから去ってほしい」


「あら…意外と意固地なのね。私は本当のことを口にしたまでよ。オリビアはあなたに優しくしてほしいって思っているわ。離れたくないとも思ってる。オリビアのことを好きなら離さない方がいいわよ。後で後悔しても知らないわ」


くるりと背を向けて離宮を出て行ったオリビアの脚は、ジェラールの離宮へと真っ直ぐ向かっていた。

ルーサーは窓からそれを確認して、深いため息をつきながらずるずると壁際に座り込んだ。


「あれが…覇王剣なのか。…一体僕にどうしろと…」


オリビアを奪え、と?

オリビアを好いているジェラールから、奪えと?


ルーサーの悩みは尽きず、眠れない夜を迎えた。
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