「同じ空の下で…」
電車から眺める景色は、とても好き。

四季を感じる事が出来るから。

亮太と住むアパートから3個目の駅に着くと雑踏に紛れ、改札を抜け、

リズムを刻むようにヒールを鳴らしながら会社への路を急いだ。

今日は、応接室の掃除当番の日だ。


ロッカールームに着くと、制服に着替え、ネームホルダーをかけ、職場のドアを開く。

「おはようございます」

「おはよう。」

窓際の課長がPCディスプレイから少しだけ顔をずらし、挨拶をしてくれた。

自分のデスクに一度荷物を置くと、給湯室へ向かう。

応接室のカギをキーボックスから取出し、掃除用具を持つと3個ある応接室の真ん中の部屋をあけ、掃除を始めた。

ふと左手首の時計に目を移すと、間もなく8時を刻もうとしていた。


朝礼をこなし、重役室に入ると、今日の予定を常務に伝える。

熱くて濃い煎茶をすすりながら、常務は言う。

「来客との打ち合わせが済み次第、会食にむかうので、車の手配をよろしく。」

「承知しました。では、下がります。」

「ありがとう。」


これが、いつもの日常だ。


デスクにつくと机上のスマホがブルブルと震える。

[受信:亮太]

[本文:今日も帰りがおそくなるかも~。取引先と会合。飯、いらないから。]



…この文が嘘なのは、わかる。


[返信:了解。私も友達と会う約束があるから、遅くなったらごめんね。]


返事を返すと、仕事を続けた。



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