「同じ空の下で…」
「…うん。」
「…渡米して、短期間で色んな景色を見た。色んな人間に会った。色んな物を見た。そして…色々感じた、考えた、考えさせられた。短期間だというのに、こんなにも自分に刺激を与えてくれてる事に、この、恵まれた環境に初めて感謝している。じいちゃんにも、感謝の気持で一杯なんだ。」
「うん、じゃぁ、楽しんでるんだ、瞬。それで、いいんじゃないの?」
「…ああ、満足してる。だけど、やっぱり…気にかかる。日本に残した…ここに居る女の事。」
「…あたし?」
「…Yes.…うまく、言葉が纏まらない。…未練を残したまま、渡米しなきゃ良かったって…後悔もした…。」
胸の奥がなんか締め付けられるような、寂しさに似た、変な感覚を覚える。
鼓動も早くなるけど、嬉しさの速さじゃない事はたしかだった。
また一口、ビールに口づけると、大きく深呼吸をして、瞬から目線を逸らし、遠くに見える街灯りに目を移した。
言わば、彼のかけがえのない、人生で唯一のアメリカライフを、時折、切なくさせ、気をもませているのは…他の誰でもない、私自身なのだ。
邪魔…してるんだ。