「同じ空の下で…」
そう言いながらも、私はスニーカーを脱ぎ、裾を捲り上げると、水際まで一人で歩いて行った。
裸足で砂を踏む感触がこの上なく気持ちいい。
そして、波打ち際まで来ると、足を浸した。
そして振り返り、瞬を見ると、誰かから電話がかかってきたのか、左耳にスマホを充てて…電話中の様子が見えた。
また、海側に体を向けて、海水から見える砂を見て綺麗な貝殻とか転がっていないかと目を凝らして探し始めた。
暫くその事に夢中になっていた。
「艶香。」
背後から声を掛けられ、瞬の顔を見上げる。
「…ん?」
「…病院向かうから、帰ろう。」
少し神妙な面持ちで私を見る瞬ですぐに私は分かった。
「…御祖父さん?」
「…ああ。急変したそうだ。」
水辺からすぐに上がり、裸足のまま、スニーカーを履き、バイクのある場所まで急ぎ目で歩いた。
終始無言の瞬は、エンジンを踏み込み私が瞬にしがみつくのを確認すると、右手で私の両手に触れ、包み込んだ。
「we go!」
「Roger.」
振り落とされないように、更に腕に力を込めるのを確認すると、瞬は一気に加速して、その場を後にした。