「同じ空の下で…」
すすり泣く瞬の声が、部屋の中に響いている。
ああ、男の人って…こんな風に泣くんだな…。
瞬の泣いてる所は、何度か見た事はあったけど…
…かける言葉が何度考えても見つけられない程に、これは特別な涙だと認識した。
ただただ、瞬の頭を撫でて、成す術もなく瞬を胸に抱きながら、頭を抱えて撫でるのが精一杯だった。
ほんの数十分に過ぎなかった時間は、私にとっては何時間も経ったような気がしていた。
「…ご、ごめんな、来ていきなり…。」
「…ううん、いいよ…。…落ち着いた?」
目をゴシゴシとパーカーの裾で拭う瞬の目は、真っ赤になっていた。
その目を見てしまって、私は益々…かける言葉を失ってしまう。
「…どうぞ?上がって?」
「…うん。」
私は何か飲み物を物色して、冷蔵庫の中に冷やしてあったピーチティをグラスに注ぐと、瞬に差し出した。
「…サンキュ。…あんま、優しくしなくていいぞ?」
「…うん、分かった。」
瞬は、小さく「いただきます」と呟き、ピーチティを飲み干すと、ふぅーーーっと少し長い溜息をついた。
「ほんと、ごめんな、艶香。」
瞬の瞳を見つめて、私は頭を横に振った。
「いいよ…、瞬の気分が少しでも落ち着くなら、この位の事なんて何とも思わないよ。」
私も、ピーチティを一口飲んだ。