「同じ空の下で…」
そう掛けた言葉と同時に涙を堪えるようにして、瞬は目をまたパーカーの裾で拭った。
空いたコップを片手に取り、また冷蔵庫に行くと、ピーチティを注ぎ足して、瞬の目の前に置いた。
「…瞬は、前に私に言った。『素直に泣けるお前が羨ましい』って。…瞬も泣けるんだよ、素直に。状況は違うけど…泣けるってやっぱり感情が備わって居る証拠なんだから、自分を恥じる事はないと思う。…泣けるときに泣けば、きっと、泣いた分だけ強くなれるんだと思うんだ。その証拠に、泣いたら少しすっきりしなかったかな?」
「…何かっこつけてんだよ、艶香。」
「いいじゃない、たまには。いっつも私ばっかり泣いてばっかりで…フェアじゃない気がするし。」
その言動がツボにはまったのか、瞬は口角を上げて、片眉だけ上げ、いつもの顔で微笑んだ。
「あ、その真似っこ、私も出来るんだよ。ホラ…」
私も、いつかタケルにして見せたように、瞬の癖のある笑い方を本人を前にしてやってみせた。
「…よく…見てんな…」
「当たり前でしょ?」
そう言い放った時に、瞬は私の頭を素早く右手で引き寄せた。
「艶香、ありがとう」
いつもの低くて甘い声に、私は心地よさを感じ、目を閉じた。
「ここに…居てくれてありがとう…」
「…少しは…私、瞬の役に立ててるのかな…?」
「充分だよ。」