noir papillon
ハルの様子に目を細めるカナメは紅茶を一口。
コクリと喉に流すとふっと息を吐く。
「どうせ2人だけじゃなく、カナメもミヤビ もリッカも、皆有り得ない程強い魔法が使えた りするんだろ?」
「確かに、俺は強いよ?だてにギルド長務め てる訳じゃないし。あの2人でも足元に及ばな いだろうね」
ふてくされているハルの言葉に鼻高々に言うカ ナメ。
あまり誉めると調子に乗りそうなので、あえて 触れない事にしよう。
「リッカもあぁ見えて凄腕の魔法使いだ。頭 脳派だから余りその力を目にする機会は無いけ ど」
そう言うと掌の上に作り上げた小さな氷。
片目を瞑り此方に背を向け座るリッカへと狙い を定めるカナメは冷気を放つそれを指で弾いた 。
「ちょっ…何を……」
勢い良く飛んで行く氷の塊はスピードを落とす 事無くリッカとの距離を詰める。
振り向かない彼女は身に迫る危険に気付いてい ない様子。
このままでは鋭い氷の刃が彼女の身体を…
焦りながら立ち上がるハル。
しかし彼が駆け出す前、リッカと氷の距離が1 メートルを切った頃、それはまるで存在しない もののように消え去りこの場から姿を消した。