noir papillon
深く深く息を吐くカナメは静かに立ち上がる。
「…緊急事態だ。ミヤビが災厄の魔女と遭遇した」
「っ……!」
カナメの言葉に皆息を呑む。
勢い良く席を立ち、拳を握り唇を噛み、顔を歪め目を見開く。
「詳しい情報はまだ手には入っていない。だからリッカ、急いで──」
「わかってるのだバカナメ。既に収集は始めてるのだ」
リッカは物凄いスピードでキーボードを叩く。
言わずして動く彼女に関心するカナメは次いでタクミとシンリに目を向けた。
「急で悪いが、2人は現場へ向かってくれ」
「「了解」」
彼の言葉に頷くと共にふっと吹いた小さな風。
その風に乗って2人は一瞬にして姿を消し現場へと向かう。
「ハル、君は彼女を頼む。彼女の事だ。きっと、否必ず無理をする筈。だから彼女の傍に居てくれ」
「ちょっと待──!」
何が何だか分からない。
もう少し話を聞かせてくれないと。
そう思い口を開くが何も聞く事はできず、カナメの魔法によりフワリと宙に浮く身体。
眩い光に包まれると彼の姿は其処から消えた。
「…さてと、俺も向かうとするか……」
ハルを見送ったカナメはジャケットを羽織ると襟を正す。
そして1つ息を吐くと扉を開き、何も言わずに出て行った。