noir papillon
純白のカーテンを揺らし迷い込むのは悪戯な夜の風。
窓辺に飾られた色鮮やかな花は花弁を散らした。
小さな個室のベッドで眠るミヤビ。
穏やかなその寝顔を見つめるのは心配そうな顔をするハルである。
「…さっきは何とか足止めできたけど、次はそう簡単に上手くいくとは思えない……どうするか……」
傍の椅子に座るハルは腕を組み考える。
油断していたから成功しただけで、自分が到底適う相手ではない事はわかっている。
だが、だからと言って彼女に無理をさせる訳には…
「…ハル……っ……」
目を覚ましたミヤビ。
起き上がろうとするも苦痛に顔を歪め耐えるように唇を噛む。
「無理するなミヤビ。まだ傷は治ってない。動ける状態じゃねぇんだから……」
「平気だってこの位。何とも無いよ」
辛い筈なのに、彼女は尚も此処を出てギルドへ戻ろうとする。
「何でそこまでして……」
「…もう嫌だから……もう何も、失いたくないから……」
ベッドに押し倒された彼女は悲しい瞳で遠くを見つめ呟いた。