この恋は、絶対に秘密!
「気になんないの?かなりの美人だって噂だよ?」

「なりません」

「なーんだ、つまんないの」



お母さんと同じようなことを言って口を尖らせた知恵美ちゃんは、トンッと判子を押して時間を確認する。



「やばっ、会議が始まる!じゃあ瀬奈、それお願いね!」

「はいはい。いってらっしゃい」



忙しく去っていく知恵美ちゃんに苦笑を漏らしつつ、“従姉妹の結婚式のため”と書かれた有休届に私も判を押した。


私はその人をまだ見たことはないけれど、どんなに美人でもきっと嫉妬はしないだろう。

だって、岬さんの中に存在する唯一の女性が誰なのかはわかっているから。



そう、気にしない──はずだったのに。

数日後、気にせずにはいられない出来事が起こった。


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