この恋は、絶対に秘密!
和久井さんが誰と仲良くしようと、俺が文句を言える立場ではないのに。

自分でも気付かないうちに、彼女のことを好きな気持ちは膨らむばかりのようだ。



そして、倉庫に入って彼女の代わりに折りを取ろうと手を伸ばしたその時。

俺の腕の中にいるような感覚がするほど近くで、猫のように身を縮める彼女にドキリとする。


黒縁眼鏡の奥の瞳は動揺するように揺れ、長い睫毛が震えていた。

あの夜のことを思い出し、身体が、胸が熱くなる。



「あのさ……」



“君は、絵瑠なんだろう?”


そう喉元まで出かかった時、倉庫の扉が開く音がして我に返った。


聞いてどうするつもりなんだ、今さら……

あの夜のことを謝るのか?

それで何か解決するわけじゃないだろう。


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