この恋は、絶対に秘密!
何事もなかったかのように話を戻したが、心は乱れたままだった。


どうしたらいいのか、こんなにわからなくなるなんて、過去の恋愛でもなかったかもしれないな──。




もどかしい想いを抱えたまま忙しく日々は過ぎてゆき、気付けば優海の命日を迎えていた。


毎年、彼女が好きだったガーベラの花束を持って墓地へ向かう。

まだ誰も来ていないようで、墓石を丁寧に掃除して花と線香を供え、手を合わせた。



「優海……」



そっちの世界はどうだ?

そこから俺はどう見える?


そんなことをぼんやりと問い掛けながら、爽やかな秋晴れの空にゆるりと立ち上る線香の白い煙を眺めていた。



「英司くん」



不意に呼ばれて振り向くと、穏やかな笑みを浮かべるお義父さんがいた。

その後ろから、お義母さんと美波ちゃんが姿を現す。


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