この恋は、絶対に秘密!
「……それのどこがよかったんだかわかんないわー」
あの夏の日の想い出に耽る私が振り撒くピンク色の空気を、知恵美ちゃんは呆れたようにバッサリと一刀両断した。
「ただの仕事人間じゃない。どんだけ頭の中弁当で埋まってんのよ」
「いーじゃないの!仕事にアツくて何が悪い!」
どこまでも課長の味方をして鼻息を荒くする私を横目に、知恵美ちゃんはしれっとした顔でフライをかじる。
「まぁいいけどね。瀬奈にとってはあの人が王子様に見えるってことは十分わかったわ。
…で、あの時の人物があんただってことは課長は気付いてるの?」
「気付いてないと思うよ。お互い名乗らなかったし、話したのも30分だけだし…」
それにこんな地味子だし?
あの日の出来事すら覚えてるかも怪しいでしょう。