この恋は、絶対に秘密!
──“アイツ”って誰?


という質問までは出来なかった。


煙草とライターを持って立ち上がり、ベランダへと向かおうとする彼の背中が、“もう何も聞かないでくれ”と言っているようで。



色々と聞いてスッキリさせるはずが、逆に新たな疑問を生むハメになってしまった。

私は誰に似てるっていうんだろう──。



“アイツ”の正体を何の手掛かりもなしに頭の中で探っていると、不意に岬さんがこちらを振り向く。



「俺は煙草吸ってるから、シャワー勝手に使ってていいよ。
…あぁ、着替えがいるか?」



もういつもと同じ様子に戻っている岬さんは、まだ火のついていない煙草を口にくわえたままどこかへ向かって歩き出す。

さすがにこの汗は流させてもらいたいからありがたい。


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