あふれるほどの愛を君に
ここで沈黙を作ってはいけないって、瞬時にそんなことを思った。
そんな雰囲気にしてしまったら、そこになにかしらの意味を持たせてしまう。そうであってはいけないと咄嗟に思う。
でも、心では焦るのに何も言えなくて……そんな僕を見透かしたのか星野が口を開いた。
「もうっ、またそうやって黙りこむ。やっぱりわかってないなー。三年前もなんにも言ってくれなかったよね? 好きって言っても」
そして、彼女らしい明るい笑顔を浮かべた。
「なによりタケルのことを思って答えれなかったんでしょ。わかってたよ。阿久津君、優しいから」
その笑顔に、久しく浸っていなかった、やわらかく、けどちょっとだけ切ない静かな起伏を覚える。
それを心地よく感じながら、唐突に胸に浮かんだ愛しい影にチクリと心が痛んだ。
彼女のいない場所でこんな感情を抱いてる自分に、後ろめたさのようなものを感じた……いや、“ような”ではなく後ろめたかった。
僕の誕生日を祝うデートを断って、星野と会っていることが。
僕にとって星野は友達にはかわりないけど、でも彼女は女の子で、それに彼女は……過去に一度好きになった相手だから。
数日前に交わしたばかりの約束を“結構前に約束した”なんて嘘をついたことが……全部が、後ろめたかったんだ。