あふれるほどの愛を君に
促されて包みを解く……プレゼントの中身は──
「財布?」
「気に入るかわかんないけど」
それは、キャメルカラーのレザーウォレットだった。
もう一度、いいの?と訊ねた僕に星野は、はにかみながらこたえた。
「一生懸命選んだのに受け取ってくれなきゃ困るよー」
「うん、そっか……サンキュ」
何故だか不思議と胸の辺りがくすぐったくなる。同時にそんな感覚を懐かしく思った。
それは相手が星野だから、っていうのも少しはあるかな。
かつて抱いていた淡く切ない感情は、もうとっくにただの思い出になっているのに。でも、静かに心を揺さぶられてるようにも感じる。
「阿久津君」
「うん?」
さっきより落ち着いたトーンで声を発した彼女を見る。
「卒業式の日もここに来たよね、二人で」
いつもよりゆっくりと言葉が繋がれる。
「わたしが阿久津君に、告白したのも……ここだった」
その瞬間、クンと胸が音を立てたような気がした。