あふれるほどの愛を君に
「なんだかさっきから静かだね」
店を出て並んで歩いてる時だった。
「え、俺?」
のぞきこむような視線に気づいて聞き返した。
「他に誰がいるの?」
「そう、だよな」
力ない僕の返事に星野は、ふはっと吹き出して言った。
「どうしたのーなんか悩みごと?」
「いや、別にそんなわけじゃ……」
口数が少なくなっていたのは確かだと思う。加えて、沈んだ顔をしていたかもしれない。
サクラさんの顔を浮かべては、後悔の念みたいなものが沸き上がっていたから。
後ろめたい気持ちと、ここ最近ずっと抱えていたモヤモヤが一緒になって膨らんで──
だけどその時、突如浮かんだ思考に思わず立ち止まった。
「あ、やっぱり……あのさ」
驚いた顔の星野が僕を見上げた。
「なに?」
「悩みごとではないんだけど……。星野、通信教育やってるって言ってたよな? その話、もっと詳しく教えてくれないかな」
「いいよ。じゃあ今度、入学ガイドとかパンフ残ってるからあげるよ……あれ?」
笑顔で答えてくれていた星野の表情が急に変わって、その視線が僕の肩越しにどこかを見つめているのに気づき振り返った。