あふれるほどの愛を君に
*・*
「悪いわねーハルオにこんなこと頼んで。サクラにも連絡したんだけど電話出なくて」
「いいですよ。ちょうど近くにいたんで」
星野と別れた帰り道、桃子さんから電話が入り呼び出された僕は、桃子さん宅の玄関にいた。
「おじゃましまーす」
靴を脱ぎ中へ入ると、キッチンに立つ桃子さんの旦那さんが振り返り、ニッコリと笑った。
もともと口数は少ないけど、いつもニコニコと温厚な実さん。エプロン姿がよく似合っている。
「はい、これ。サクラと分けてよ」
お腹をさすりながら歩いてきた桃子さんが、僕の前に大きな袋を置いた。
中身は、オレンジ色が鮮やかなミカン。まるで作り物みたいにピカピカと光ってる。
「それは甘夏よ。先月届いたのはデコポン、その前のがネーブルで更に前のはハルミとポンカン……っていっても、どうせキミ達には区別つかないだろうけど」
近くのリクライニングチェアに、ヨイショと体を預けた桃子さんが鼻先で笑った。
“キミ達”っていうのは、僕と実さんのことを指してるんだと思う。
キッチンの方を振り返ると、実さんがこっそりと肩をすくめてみせた。
「悪いわねーハルオにこんなこと頼んで。サクラにも連絡したんだけど電話出なくて」
「いいですよ。ちょうど近くにいたんで」
星野と別れた帰り道、桃子さんから電話が入り呼び出された僕は、桃子さん宅の玄関にいた。
「おじゃましまーす」
靴を脱ぎ中へ入ると、キッチンに立つ桃子さんの旦那さんが振り返り、ニッコリと笑った。
もともと口数は少ないけど、いつもニコニコと温厚な実さん。エプロン姿がよく似合っている。
「はい、これ。サクラと分けてよ」
お腹をさすりながら歩いてきた桃子さんが、僕の前に大きな袋を置いた。
中身は、オレンジ色が鮮やかなミカン。まるで作り物みたいにピカピカと光ってる。
「それは甘夏よ。先月届いたのはデコポン、その前のがネーブルで更に前のはハルミとポンカン……っていっても、どうせキミ達には区別つかないだろうけど」
近くのリクライニングチェアに、ヨイショと体を預けた桃子さんが鼻先で笑った。
“キミ達”っていうのは、僕と実さんのことを指してるんだと思う。
キッチンの方を振り返ると、実さんがこっそりと肩をすくめてみせた。