あふれるほどの愛を君に

洗面台の前まで運んだ体を、そっとその上へ下ろした。

瞳をのぞきこみながら、頬にかかった髪を小さな耳にかける。

その内側に人差し指を這わせると、サクラさんの体がビクンと反応した。

唇を寄せ、やわらかな耳朶に口づけ、そのまま優しく吸いつく、ゆっくりと……。

喉もとに熱い吐息を感じた。


緩めていたネクタイを片手で引くと衣擦れの音がした。

掌を彼女の頬にあてる、包みこむように。それから、下へとずらした唇で白い首筋をついばんだ。

桜色の唇が半開きになっているけど、まだそこへは口づけない。

まずは前髪をかき上げて額に、次にこめかみ、瞼、頬……もう一回耳。

触れそうな距離で唇の上を通り過ぎ、首筋を上から下へ、唇や舌先、五感で確かめる。

しっとりとした柔肌、上昇する体温、甘い香り……上から下へ。

ブラウスのボタンに指をかけて腰を引き寄せ、顔を降下させる。指先と掌と共に。

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