あふれるほどの愛を君に

あの夜のことを、僕は訊けずにいた。

本当は気になって毎日そのことばかり頭の中をめぐってて、四六時中、不安と苛立ちでいっぱいなくせに。

ささくれだった心を宥められないでいるくせに、言いだせずにいたんだ。


──ねぇ、サクラさん。

二人っきりで出張に行ったのには何か理由があって、それを単に言い忘れただけだよね?

連絡してくれなかったのも忙しかったせい。
二人で歩いてたのだって送ってもらっただけ。

すぐにマンションから黒木さんが出てこなかったのは………玄関でちょっと話こんでいたのかな。

それも当然、仕事の話。もちろん部屋になんてあげてない。

ねぇ、そうだよね?

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