あふれるほどの愛を君に

エレベーターの扉が開いた。


「夜はなに食べたい? ランチするお店はもう決めてあるんだ。でも、どんなところかはまだ秘密よ。行き先も当日までのお楽しみだからね」


廊下を歩きながら話を続けるサクラさん。

ふわふわとした足どりや柔らかな微笑みからも、隠し事をしてるようには見てとれない。

だったら、僕の胸がこんなに落ち着かないのは不安だから。彼女を信用しきれていないから。

それじゃあ悪いのはやっぱり……僕自身、なのかな。

黒木さんへの嫉妬も、サクラさんに本音をぶつけられずにいるのも、酷くちっぽけなプライドとなにより自信のなさのせいかも。


「あのさ」

「うん?」


なによりも大切なのにね。


「あの、ごめん」

「なに、急にどうしたの?」


大好きなのにな……。


「日曜はちょっと……ダメなんだ」

「ダメって?」

「あの、友達と約束してて……高校の時の、結構前にさ約束しちゃって……ずらせないんだよね。だから、ごめん」


ガッカリしてる顔なんてさせたくないのに。見たくないのに。


「そっか……仕方ないね。残念だけど、また今度にするしかないかぁ……」


全然大人じゃない僕のせい、なんだ。

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