無題


涙がたまる。

このぬくもりを感じたことはなかった。

あたたかい…あたたかい…。
今いる場所は、有川の家だった。
あの時飲んだオレンジジュースの匂いがする。

『飲む?』

さしだされた果汁89%のオレンジジュース。
あの時より甘味を感じる。

ゆっくり一口ずつ飲んでいく。有川も…。


この一口一口が重く感じてくる。

『1人じゃないから…大丈夫。』

私に向かって有川が手をのばしてくれたが、それを振りほどいて自分の家に帰ってしまった。

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