家庭*恋*師
「っと、遠山さん?」
「すっごいよ、さすが南!やってくれると思ってたけど、まさかここまでなんて!」

今にも泣き出しそうなほど興奮している豪を見上げれば、その手には2年生の順位表。

「出雲くんが2p目に載ってんだよ!?理事会のおじさま達もすっごい上機嫌!ほら、最初は50位でも無理とか言われてたからさ!」
「あ、そう…それはよかった」

先ほどまでの自分のテンションとあまりの落差に、頭がついていかずそんな気のない返事しかできなかった。顔をあげると、そこにはカズの姿もあった。表情はどこか複雑そうな、でも安心しているのがわかる。

言葉もなく南の方へと近づき、そしてポン、と頭に手を乗せる。

それは、上級生にいじめられていた友達を泥だらけになるまで庇った時や、泣きじゃくる秀に自分の分の駄菓子を分けてやった時に似たもの。

よくやった。えらい。

また昔のように、そう言ってくれているようだった。男女の隔てもなく、男子校を受験して自分が置いて行かれる前の日々に戻ったような。

そう、自分は、ただこの気持ちを取り戻したくてここに来たんだ。それを、思い出した。

だったら迷っても仕方がない。自分で決めたことを、今更やめる選択など南にはない。

することは決まっている。いつものように、不敵な笑みを浮かべ、ドヤ顔をするだけだ。放課後、寮部屋で何があったとしても。

覚悟は、決まった。
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