ラブランディング
「ほら、俺に今ときめいた」
「ときめいてないです。困ってるんです」

どうして先輩の私が敬語になってるんだか…

「沖くんってさ…あのほら、人の物とだから欲しくなるタイプ?私に付き合ってる人がいなかったら、興味わかないんじゃないの?」
「俺が奈月さんに興味持つの、そんなに不思議ですか?」

整った顔を傾げ、まるで年相応の男の子のように目を見開いてきょとんとしているものだから、気が緩んでしまった。そして同時に、緩む頬。

それを見て、沖くんは満足そうに笑う。

「その顔ですよ」
「え?」
「奈月さんのその笑顔が、素敵だなって思ったんです」

…この子には、フィルターってものがないのか…

私は、赤くなった顔を隠そうと立ち上がるけど、しっかりと見られていたようで、その後も続けた形だけの案内の間、彼はずっとにやにやとしていた。


***


「すげーじゃん、期待の新人の教育係っつーことは、ナツも認められたってことだろ?」
「それはどうかな…」

無邪気にそう言うユウに気のない返事をするけど、当の本人は何も気付いていないようだ。

そういえばどこかで、男の人は古代から狩りや戦いで優位に立つため、苛立ちとか怒りとか攻撃的な感情を読み取るのは得意だけど、悲しみとか心配を読み取るのは苦手って読んだことがある。

だから、私の今の曖昧な言い方じゃ、きっと気付いてはもらえない。ちゃんと言葉にしなくちゃ、伝わらない。

だから、私は重い口を割った。

「…沖くんになんか…告白みたいなこと言われた」
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