ラブランディング
「そうだったんですか?いいなー麻田先輩!」
「あはは、そんな風に言ってもらえるほどのことじゃないけど…」

そう。社内恋愛は御法度、という厳しい会社とは違い、うちの割とオープンな方針からか、私、麻田奈月(あさだ なつき)と彼、藍原佑人(あいはら ゆうと)の関係を知らない人はいないってくらい。それはそれで少し恥ずかしいんだけど‥でも、嬉しくないって言うのも嘘になる。

なんか恋愛小説顔負け、とまでも言われているほどだ。まぁ、噂に尾ひれがついた、というのも否めないんだけど。そこまですごくなかったし。

「お、噂をすれば」
「え?」

向かいに座ってる杏のことばを理解するより早く、頬に伝わる冷たい感触に思わず「ひゃっ」と間抜けな声を上げる。しかめっ面で振り向けば、そこにはまるで悪戯を成功させて喜んでいるような表情の佑人がお茶の缶を持って立っていた。

「よっ。皆で何楽しそうに話してんの?」

「藍原先輩と奈月のロマンチックな恋愛物語の話を新人にしてあげてるんですよー」
「おー、そりゃ楽しそうだな」
「もう杏!悪ふざけはやめてよね!」
「本とのことだもんー」

悪びれている様子のない杏を諭すようににらみつけてやるけど、効果ないんだろうな‥そんな彼女を無視して、ユウの方を向く。

あぁ、この顔すきだな。何かがうまくいって、ご機嫌の時の顔だ。ホント子供みたいで、かわいい。

「今日の会議、終わったの?」
「ん、先方に契約のOKもらってきたトコ。そこで、これは戦利品」
「決まったんだ!おめでとう!」
「おう。っつーことで皆さんの仕事増えると思うけど、よろしく!」
「藍原さんおめでとうございます!」
「どもども」
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