ラブランディング
「新社員の沖くんだ。もともと広報部に行く予定だったのが、うちを希望してくれたらしくて、少し遅れたが今日から改めて働いてもらうことになった」
「沖千紘(おき ちひろ)です、よろしくお願い致します」
「こちらこそよろしく」

名前まで女の子みたい‥なんて言ったら失礼かな?肌も私なんかよりキレーで見とれちゃいそう。

「麻田くんの隣のデスクが空いてるからそこに入ってもらうことになった。最初のうちは何かと大変だろうから、手助けしてやってくれ」
「はい、わかりました」

課長に二人で頭を下げて、デスクの方に案内する。事務課の子が新しいパソコンを届けてたのは、これだったのか。

「ここがデスク。筆記用具とかはまだ届いてないみたいだから、私が庶務課に頼んでおくね」
「ありがとうございます、奈月さん」

名前を呼ばれて、一瞬ドキっとしてしまった。なんて、甘い声。こんな風に異性に話しかけられることなんて最近なかったから、免疫がない女学生みたいだ。

それをかき消すように愛想よく笑ってみせるけど、ふとある違和感に気がついた。

「あれ‥」

そうだ、私はこの子に下の名前を名乗ってないのに、どうして?

そんな私の表情と、ふいに漏れた言葉を沖くんは見逃さなかった。さっきと同じ、綺麗な顔でこっちを見る。

「奈月さんですよね?オリエンテーションの時に受付やってたの」
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