ラブランディング
「沖くん…さっきのって…」
「奈月さんって、男の人の扱いに慣れてるでしょ?」

思ってもみなかった一言に、目を丸くする。

何を言い出すかと思ったら…。生まれてこのかた、モテたことなんかない女に言うようなことじゃない。思わず、ブハッ、と女らしさのカケラもない笑いが漏れてしまう。

「なに、皮肉?どーせ今付き合ってる人以外に、告白されたこともないですよーだ」
「ほら、それも。すごく自然に、彼氏がいるってアピールしてるし。さっきだって、俺が綺麗って言ったの、あっさりとかわして話題転換しようとした。そうやって、今喋ってる人が対象外だって上手に伝えてる」

彼は急に良弁に、そう語った。あまりに淡々と言われたものだから、呆気に取られてしまう。

だってそんな…意識もしたことないし、だいたい、そんな意識しなくても良かった。

「もしかして、わかってないんですか?無意識でやってるってことは、結構モテてたんですね。自覚してたかどーかはわかんないですけど」
「いや、全然そんなんじゃないけど…」

沖くんの言葉の数々に、頭の回転がついていかない。だって、あまりに許容キャパ超えた話で…自分には、縁のない話だもん。

私が、モテてた?まさか、そんなこと全然ない。

高校や大学で付き合ってた人は居たけど、それは大体友達から発展したものだし。本と片手で数えられるくらいの恋愛経験で、それに…アレも、ユウが初めてだし…

そんな女が、モテてたとか、男の扱い慣れてるとか、この子は何を言ってるんだか。
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