小さな主人と二人の従者
　ミラベルは両手を組んで、その上に顎を乗せた。それを聞いて、水を飲んでいた手を止めた。
　どうしてそんなことを言うの？
　みんなに同じことを言われる。ミラベルの表情が暗くなって影ができた。

「私、元気じゃなかった？」
「全然ね。本当にどうしたのかと思ったわ」

　先日、セリーナ先生にも似たようなことを言われた。あのときはそんなに気にしなかったけど、記憶喪失と何か関係がある可能性が高まった。
　記憶があった頃に何があったのか、ミラベルにもわからなかった。

「数ヶ月前から私と会う回数が減ってきて、理由を言おうとしなかったじゃない。おまけに食欲だってなくなっていったから」
「周囲にだって怯えるようになっていたから」
「怯える？」

　どうして？
　それは自分が人間不信になっていたということを意味しているように聞こえた。ひょっとすると、それが正解なのかもしれない。
　そんな状態に陥っていたことにショックを受けた。

「嘘・・・・・・」

　そのときミラベルの顔が歪んでまた目の前が真っ白になった。またジュリアに記憶が流れてきた。
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