ツラの皮
駆け引きなら欲望も簡単に制御できたんだ。
好きだから発作みたいに欲しくなる。
気持ちを蔑ろにするつもりはないが、プラトニックなんざクソ食らえだ。
旅館に辿り着き、雑魚部屋のある二階をスルーして三階まで階段を駆け上がった。
本来ならタチバナも雑魚部屋だが、今回は別行動だったのと、旅行という名目からか個室を取っている。
「ま、ま、待ってよ。穂積クンが帰ってくるかもだし……。」
「絶対アリエネェ。どこかしらに捕まって明け方まで帰ってこないから安心しろ。」
大体、アイツは俺の気持ちに気付いてんだ。
知っていてこの隙を作ったんなら据え膳だろ。
なら遠慮なく戴くぞ。
鍵を開けて中に踏み込み、俺は乾いた笑みを浮かべた。
「……ふうん。ここでタチバナと、……な。」