ツラの皮
「止めろ。」
堪らず俺は段上へ飛び出した。
足音も荒く、驚く二人の間に―――雪乃を前に睨み付けた。
涙を抱えたような表情、その奥に甘い記憶を呼び覚ますような憧憬がほんの少し見え隠れする。
こんな時でも雪乃は完璧だ。
だからこそ俺はもうコイツを信用することが出来ない。
「何もかんも水に流すとはいったが忘れたわけじゃないとも言っただろ。この先、当たり障りのない関係を取り繕うことは出来ても、オマエを好きになれることはない。絶対だ。」
一言一言を噛み締めるようにゆっくりと告げた。
その一つ一つが蝶を縫いとめるピンであればいいと本気で思うくらいその時の俺は冷徹だった。
「二度とコイツに近づくな。無論、俺にもだ。」
それだけ言い捨てて俺は鈴の手を取って展望台を後にした。