ツラの皮
「ちょ、腕イタイッ!歩くのハヤイッ!高遠っ!」
緩い下り坂を剥きになって進んでいると、後ろから鈴が悲鳴を上げた。
足を止め、小さく呟く。
「……頼むから。アイツを信じるな」
掴んだ腕から鈴の小さな狼狽が伝わってきた。
それに嫌な焦燥を覚えながら、思い思いに言葉を足していく。
「付き合っていた・・・多分。アイツが他の出演者と噂になって別れた。それは事実だ。」
当時の雪乃は、ちょっと名が知れただけの新米とは謙遜で、ドラマでブレイクしたての最も旬な若手女優と持て囃されていた。
それこそこの業界に入りたての新米は俺で、撮影で知り合った雪乃に舞い上がっていた。
麻生を交えて俺達三人は同世代だということもあって、現場で仲良くしていても特別注視されることもなく、その影でこっそり俺と雪乃は愛を深め合っていた。
俺はアイツを愛していたし、アイツは俺を愛していると信じて疑いもしなかった。
雪乃が共演者と熱愛を報道されるまでは。