ツラの皮
「…………そんなこと、ない。」
取り留めのない言葉を鈴が遮った。
「過去のことはよく分からないけど……少なくとも今の雪乃さんがアンタを好きってのは嘘じゃないと思う。だって、私、現場で見たの。雪乃さんすごく切なそうにアンタのこと見てた。何も知らない私が、ひょっとして雪乃さんって高遠に気があるんじゃないかなって分かるくらい切ない瞳で……」
「だからソレが演技なんだっつってんだろーが!」
カッとなって俺は勢いよく振り向いた。
「なんでオマエがそれを知ったんだと思う?言っとくが、コレまで他のスタッフに同じ指摘を受けたためしは一度もねーぞ。アイツがオマエにあえて見せたんだ。」
過去とはいえ自分のものだったオモチャを取られるのが気に入らなかったのか、
はたまたこの時分になって現場でそこそこ立場を得てきた俺にメリットを見出したのかは定かではないが、明らかに意図的にチョッカイを掛けてきた。
ムカツクのはその矛先が俺ではなく鈴に向けられたことだ。
ああ、確かに俺よりこのバカの方が何倍も攻略は簡単そうだけどな。
追い落とすなら追い落とすで、ヒステリックに喚くだとか喧嘩を吹っかけるという手段なら鈴だって理解するだろう。
だが、雪乃はある意味正当に、そして陰湿に想いを切実に伝えるという演技で仕掛けてきた。
この謀略を暴くのは難しい。