ツラの皮
「……どうすりゃイイと思う?」
グラスを煽りながら溜息混じりに尋ねた。
あえて伝えないことはあっても決して問いを投げやりにしない麻生はあっさりと答えた。
「彼女はほっとけば?彼女の皮を剥ぐのは至難の業だし。そんなことに労力使うより鈴ちゃんを確実に手中に収めておくほうが有効だと思うね。突け込まれないうちに仲直りした方が良いと思うよ。」
そう言って麻生は俺の膳にあった卵を手に取った。
すき焼き風の鍋に絡めて食べるものだ。
滑らかな殻は打ち付けられて小さな皹を入れ、突っ込まれた指に真っ二つに別たれた。
最初は小さな口喧嘩。
そこにちょっと手を加えれば簡単に壊される。
二度と修復出来ないくらいに。
受け皿に入った卵を見下ろし麻生が愉快そうに笑った。
「君等ってこの卵みたい?そもそもは『卵』なのに黄身と白身に分離ちしゃって。…だとしたら、一緒くたになるまで混ぜたら?混ざるまで一生懸命に、さ。」
それは分かり合うまで、分かり合うための努力をしろということか。
俺に卵を託した麻生は、他のスタッフにお酌するべくビールを片手に席を立った。