恋愛指導は秘密のくちづけで
「柏葉さん」


低く透き通った声がする。


あわててバッグに赤いふちのメガネをしのばせた。


深呼吸を軽くして、後ろをふりかえる。


「どうかした? 万里くん」


苦々しい顔をする万里くんが階段を降りて近づいた。


「何でもいいから話してくださいよ」


「何を? いろいろ話してるんじゃない」


「見てて苦しいんですよ」


万里くんの瞳の奥が揺れている。


あんなに明るい表情が似合う万里くんをこんな表情にさせてしまって申し訳ない気持ちになった。
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