恋愛指導は秘密のくちづけで
「オレは柏葉さんのことが好きなんですよ。嫌いだったらキスなんかします? 普通」


「だから年下とは」


その先の言葉が出てこない。


「万里くん、そろそろミーティングじゃない。早く行かなくちゃ」


「少し席をはずすって言ってありますから心配しないでください。そうやってはぐらかそうとする。年下っていったってそんなに変わらないじゃないですか」


足元から寒くもないのにひんやりとしたものが皮膚をつたい、背中にのぼっていくような感覚に襲われた。


「ごめん、仕事に支障きたしちゃあ、まずいから」


「……そうですか」


顔を下にむけたまま動けなくなっている万里くんを尻目にわたしは通用口のドアをひらき、外に出た。


深呼吸をする。


梅雨に入るのか、空気が湿っていて思わずむせた。


息苦しくなってしまいそうだったので、走ってバスターミナルまでむかった。
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