聴かせて、天辺の青


その中の最年長、50歳になったばかりの和田さんが、ふと顔を上げた。


「あれ? 瑞香ちゃん、居ったんか? 今日は休みか寝坊かと思っとったわ」


独特のハスキーな声、はっきりした目鼻立ちと白髪交じりの豊満な髪。若い頃は男前だったのよと、おばちゃんがよく話してくれる。


「何か今朝は感じが違うやん? 髪型もそうやし、服もちゃうんか? どないしたんや?」


和田さんに続いて、本郷さんが丸い目をさらに丸くさせた。45歳にして寂しくなってきたという前髪の隙間から、艶やかな地肌が覗いている。


半乾きのセミロングの髪をお団子に纏めて、スウェットを着てる私がそんなにも珍しいのか。


確かに珍しいのだろう。
いつも髪は下ろしているし、スウェットを着たことなんてない。ニットにジーンズが定番なのだから。


「そんなん聞いたら、セクハラで訴えらますよ」


と言って、遠慮がちに笑っている眼鏡の人が有田さん。三人の中で最年少で私と同じ26歳だ。


実年齢よりも若く見える少年っぽい顔立ちは、少し大袈裟だけど高校生が作業服を着ているようにしか見えない。


「水も滴るいい女でしょ?」


と返したら、ご飯をかき込んでいた三人が吹き出しそうになった。
なんて失礼な……



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