聴かせて、天辺の青


お風呂から上がって台所へ行くと、既に朝食は綺麗にテーブルに並べられていた。焼き魚と味噌汁の香りが、忘れかけていた空腹を再び思い出させる。


それでも、未だに忙しく動き回っているおばちゃんを見たら申し訳なくて。


何かすることは残っていないかと見回しながら、流し台に立つおばちゃんに声を掛けた。


「おばちゃん、手伝えなくてごめんね」

「いいよ、気にしないで。ちゃんと温まった? 寒かったら、もう少し服持って来ようか?」

「うん、ありがとう。大丈夫」

「じゃあ、早く座って食べなさい」


おばちゃんはにこりと笑って、真っ白なご飯の入ったお茶碗をテーブルに並べてくれた。


台所の隣に続く二間続きの和室の一室では、作業服姿の三人の男性が慌ただしく食事をしている。


彼らも家族ではなく、酒屋兼民宿の宿泊客。大見半島にある発電所の定期検査工事の作業のため、出張に来た人たちだ。


酒屋の二階には六畳の和室が五部屋あって、彼らはそこに宿泊している。宿泊客用の洗面所やトイレや風呂、冷蔵庫も二階の共用スペースにある。


三年前におじちゃんが他界してからは、おばちゃんがひとりで切り盛りしている。私は、ここの朝食の準備を手伝いに来るはずだった。

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