聴かせて、天辺の青
意識が急浮上して、目が覚めた。
とっさに飛び退く私に、
「やっと起きた」
と言った彼はまったく驚く様子もない。
ちょっと待て。
彼を待っている間に寝てしまっていたのはわかったけど、もしかすると私は彼に凭れて寝てたの?
そんなことを彼に訊ねる訳にもいかず、頭が混乱してくる。恥ずかしいやら情けないやら、自分に腹が立ってくる。
今にも取り乱しそうな私を置き去りに、彼は買物してきたレジ袋の中から一枚のチラシを取り出した。
「これ、もらったんだけど、行く? フリマだって」
彼が翳したのは手作り感のあるチラシ。今度の土曜日、この店の駐車場でフリーマーケットが開かれると書いてある。
意外にも平然とした彼の態度が、私の焦りを冷ましていく。ひとりで取り乱す私がバカみたいに思えてきた。
「今度の土曜日? 和田さんたちと温泉に行く日だけど、時間があったら行ってみる?」
あまり興味はないけど、つい口走ってしまった。彼が行くって言い出したら、後には引けない。
「ああ、行ってもいいよ。行ったことないから見てみたいし。それと、昼ご飯食べに行かない?」
断ってくれるかもしれないという望みは、あっという間に砕かれた。しかも昼ご飯って言い出す始末。
「ダメだよ、お昼はおばちゃんが用意してくれてるから帰らなきゃ」
「それなら今朝、ちゃんと断ってきたから。アンタと外で食べるからって」
玉砕だ。