聴かせて、天辺の青
だけど、彼が聞いてくれたおかげでわかった。
海斗が怪我をしたのが仕事中ではなく、仕事が終わってからだということ。
河村さんと一緒の時か、別れた後か……傷の具合から、ここに来る前ということはないだろう。
すると海斗が、パンツのポケットに手を突っ込んだ。おもむろに取り出した携帯電話の着信画面を確認した海斗は、私たちをに背を向けて話し始める。
少しずつ海斗の背中が遠ざかって、会話も聴こえなくなっていく。
「なあ、もしかすると河村さんと何かあったのかもな」
彼が小さな声で告げた。
驚きはないけど、何があったのかが気になる。まさか河村さんに殴られた訳でもないだろうし。
「何があったんだと思う?」
問い掛けたら、彼がふうと息を吐く。視線が海斗の背中から離れて、私へと向けられた。
「アンタだって、わかってるんだろ? たぶん、今思ってる通りのことだよ。さて、どうする? 聞いてみるか?」
彼が言う通り。
想像できる答えは、ひとつしかない。
「聞いてみなきゃ、そのために早く来たんだから」
電話を終えた海斗が振り返る。
さあ、言わなくちゃ。
大きく息を吸い込んで、海斗を待ち構える。